環境省技術開発・実証事業を含む帯水層蓄熱システムの紹介

Introduction of aquifer thermal storage systems,
including technology development and demonstration projects by the Ministry of the Environment

これまでの取組み

※1の事業では、
高効率・高性能な帯水層蓄熱システム向けに全量還水可能な揚水・還水切換え型井戸や熱源システムの構築技術を確立しました。

※2の事業では、
高密度に集積した都市圏において、敷地面積が狭いため熱源井戸の距離が取れず、熱干渉を起こしてしまう課題に対し、それぞれの地下水を混合させず複数の帯水層を独立に利用可能な、世界初の帯水層蓄熱システムを開発しました。

※3の事業では、
帯水層蓄熱を余剰再エネ電力の貯蔵に活用し、再エネ電力の普及に貢献しようと、今回取り組んでいる実証事業です。




事業成果1‐高砂

・大容量で全量還水可能な熱源井戸の開発を目指して2015年10月から開始した環境省の技術開発・実証事業において、始めて取り組んだ帯水層蓄熱システムです。三菱重工高砂工場にある、延べ床面積約4,000㎥の工場空調を対象に、低温暖化係数の冷媒を使った新規開発の200冷凍トン(700kW)のターボヒートポンプにより冷暖房を実施しました。

・井戸の掘さく径は、Φ600mm掘さく深度は1号井戸:73m、2井戸:70m、井戸間距離:80m、最大揚水・還水量は100㎥/hで、2016年10月末から運用開始、事業終了により2018年1月に閉鎖している。揚水還水量合計は7.8万㎥でした。



新開発の低GWPターボヒートポンプ

事業成果2‐うめきた

・同じく2018年10月から開始した環境省の技術開発・実証事業において、揚水規制区域内で大量の揚水・還水を行い、地盤沈下を起こさないこと、井戸の目詰まりの状況を確認するために、大阪駅裏の遊休地をお借りして行った実証で、多くの見学者に帯水層蓄熱システムを体感していただきました。井戸の掘さく径は、Φ600mm、掘削深度は1号井戸:59.0m、2号井戸:58.5m、井戸間距離は120mで、揚水還水量合計は57.0万㎥でした。

・この実証で全量還水することで、地盤沈下影響が回避できること、5割程度井戸性能が低下(同じ揚水量に対して水位低下量が5割下がること)したが、再洗浄で回復できることなどを検証しました。

・2017年4月末から運用開始し、事業終了により2018年11月に閉鎖しています。なお、本実証では、ビル揚水法に抵触するため、建物空調は行っていません。




事業成果3‐舞洲

・同じく2018年から開始した環境省の技術開発・実証事業です。帯水層蓄熱システム構築の基礎的な技術は、先の事業で開発できましたが、高密度で狭隘な都市域への導入にあたって、井戸間隔の制約から必要蓄熱量が確保できないことへの解決策として、複数の帯水層の地下水を独立して扱う熱源井戸の開発を行いました。

・また、実証場所となったアミティ舞洲は、1990年以降に埋め立てられた軟弱な地盤にあり、このような地域において、帯水層蓄熱システムが地盤に与える影響も評価しました。

・井戸の掘さく径はΦ700mm、掘さく深度は120m弱あり、井戸内部に上下の帯水層を切換えて使うための切換え弁を内蔵しています。
熱源規模は、高砂の実証と同様です。

・2021年3月に事業は終了しましたが、熱源設備は補助事業として建設され、現在まで引き続き運用継続されています。




2層構造の井戸

導入事例1‐三菱重工神戸造船所

・環境省事業の成果を受けて、共同実施者の三菱重工サーマルシステムズでは、2021年に同システムを設置し、安定した運用を継続しています。

導入事例2‐アミティ舞洲

・先に照会したアミティ舞洲では、2024年まで、井戸の複層利用を行ってきましたが、熱源システムが複雑で運用が難しいこと、井戸のメンテナンスを行う上で、重量の嵩む切替機構の分解組立てを含むこと、熱源機能力に対して井戸能力が倍ほどあることを勘案し、2024年度後半に、井戸の下部を埋め戻し、維持管理の容易な単層システムへの切換えを行いました。

・井戸深度が約70mとなった以外は、熱源機の容量等、特に変わっていません。


導入事例3‐うめきた2期

・先のうめきた地区での実証において地盤沈下影響が見られなかったことから、都市再生特区内での特例措置として、帯水層蓄熱システムの設置が認められました。

・南街区、北街区それぞれ揚水・還水量100㎥/h、熱源機容量200冷凍トン(700kW)の熱源システムが導入され、現在、北街区は暖房運転、南街区は試運転準備を進めています。


導入事例4‐2025関西万博

・システム規模は、これまで開発を進めてきたシステムと同規模ですが、万博会場に4つある熱源ステーションの1つに付加する形で運用が開始されています。

・このシステムは、冬季の寒冷な気象条件を活かして冷却塔を使ってあらかじめ地下水を冷却し、これを直接、あるいはヒートポンプの熱源として利用するシステムです。