再生可能エネルギー電力と余剰問題

Renewable energy electricity and the surplus problemn

エネルギー基本計画と再生可能エネルギー

・2025年に示された国の第7次エネルギー基本計画では、
・2040年度の電源構成で、再生可能エネルギーを全体の4割から5割程度に拡大する。
・再生可能エネルギーを4割から5割程度、太陽光発電を全体の22~29%程度、風力を4~8%程度とする。
・原子力を2割程度とし最大限活用(第6次では依存度を低減)する。
・資源循環政策との融合を推進する。
などが掲げられており、温室効果ガス排出削減の観点から風力、太陽光発電の導入量拡大が謳われています。
・しかし、風力や太陽光発電は、自然条件に左右され、出力変動が大きいという欠点があります。
これは翻って他の調整電源や蓄電池が必要なことを意味します。


(出典)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2022年度速報値、2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2023_1.html


(出典)JPEA出荷統計、NEDOの風力発電設備実績統計、包蔵水力調査、地熱発電の現状と動向、RPS制度・固定価格買取制度認定実績などにより
資源エネルギー庁作成
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energyissue2022_1.html


電力の需給調整の意義と風力や太陽光発電の課題

・風力、太陽光発電が大量導入される以前の電力供給は、原子力発電をベースに、水力や火力発電で需給調整が行われてきました。これらの電源の特徴は以下のとおりです。

帯水層蓄熱システムとその運用




各種電源の特徴
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/balance_game.html

・電力は、夏場に需要のピーク、冬場にそれより低いピークを迎え、春先と秋口は需要が下がる形となっていました。また、1日で見ると、昼間の需要が高く夜間にはそのほぼ半分になっています。

・最近の1日の電力の需給変動の事例を以下に示しますが、天候によって発電量が大きく変化する太陽光発電に対し、主に火力発電が需給調整を行っています。一見、火力発電の稼働率が下がり燃料費も下がるように見受けられますが、火力発電設備は、設備費が占める割合が高く、利用率の低下から発電単価が上昇します。



最小需要日(5月の晴天日など)の需給イメージ
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/balance_game.html

・電力系統は、需要に見合った電力を「同時同量」供給しないと、運用できなくなる特性があり、火力発電で賄いきれない場合は、蓄電池や水素などの代替エネルギーによる調整、需要抑制などの対策が必要となってきます。

電力の需要と供給(電力需給バランスが均等な時) 電力の需要と供給(需要>供給となった時)




電力の需給調整の意義
(出典)電力需給緊急対策本部(平成23年3月25日)の参考資料を元に資源エネルギー庁が作成
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/balance_game.html


将来の需給予想と余剰電力発生

・2050年カーボンニュートラル実現には、太陽光・風力発電の飛躍的な増加が必要ですが、その発電量は自然条件に依存するため、必ずしも電力需要にマッチしません(季節間や昼夜間、あるいは地域間のミスマッチ)。

・天候が良く、需要の低い3~5月には、本来ゼロカーボンの電力が大量に余るため、出力抑制は必至となり、九州では4,5月で400時間を超える状況となっています。

・燃料費が掛からないのに出力抑制することは、事業性を大きく損なうため、これらの再エネ電源普及拡大の妨げとなっていることは否めません。





再生可能エネルギー電力の価格調査

・卸電力市場の約定価格が0.01円/kWhとなる時間の2019年度から2023年度の傾向について、東北と北海道を除き、その発生時間は2019年度から2023年度で単調増加しています。


  地域別の0.01円発生時間の推移(2019~2023年度)      地域別の0.01円発生日数の推移(2019~2023年度)

・2023年度の特徴として、0.01円/kWhの発生時間が大きいエリアは、4、5月の九州で年間1,090時間、四国で690時間、関西・北陸620時間、中国では630時間となっています。




地域間の比較(2023年度) 曜日別・地域別0.01円発生時間


デマンドレスポンスやVPPについて

・デマンドレスポンス(DR)とは、電気の需要と供給のバランスを保つために、需要家が電力使用量を調整する仕組みで、 電気料金の設定により電力需要を制御する電気料金型DR、ピーク時に使用を控えた消費者に対し対価を支払うインセンティブ型DRなどがあります。

帯水層蓄熱システムとその運用



デマンドレスポンスとは
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

・VPPとは、地域内に分散したエネルギーリソースを統合・制御して、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組みで、風力や太陽光発電、蓄電池、電気自動車、空調や照明などの需要家側の負荷設備などをIoT技術で接続し、電力の需要と供給を細かくコントロールする技術です。



VPPのイメージ
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

・ネガワット取引とは、需要家の需要を抑制することで得る電力量を、発電した電力量と同等の価値と判断して取引する仕組みです。電力需要のピークを抑制するために用いられ、節電により生み出された電力に対して報酬金を支払う仕組みです。




ネガワット取引における電気・お金の流れ
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/negawatt.html