建物空調と帯水層蓄熱

Building air conditioning and aquifer thermal storage

建物空調の方式

建物空調とは、室内の温度や湿度、気流、空気の清浄度などを調整して、快適な環境を保つための装置やその機能を指します。

・空調設備は、熱源機、接続配管、室内機の3つから構成されます。その方式として大きく中央方式(セントラル空調)、個別分散方式(ビルマルチ空調:家庭用エアコンの機能拡張版)の2種類があり、熱源機、接続配管から室内機への熱供給は、前者が冷温水、後者が冷媒を使って行われます。

・熱源機としては、ボイラのように化石燃料の燃焼熱を使ったものや、電気やガス動力とした冷凍サイクルを使ったヒートポンプがあり、熱源機で使った以上の熱エネルギーを供給できます。ヒートポンプの熱源としては、大気の他、水(地下水、河川水、海水等)が使えますが、利用温度条件によってヒートポンプの効率の改善が図れます。

・ヒートポンプを使った空調では、冷房に7℃の冷水、暖房に45℃程度の温水が使われます。冷房に使う冷水の温度は、かなり低いように思われますが、これは空気中の水蒸気を結露させて除湿するためです。


出典:新版 快適な温熱環境のメカニズム、空気調和・衛生工学会編、丸善、2006


地中熱利用とは

地表面から10~15m以上の深さでは、地盤の断熱効果により、地温はその地域の平均気温から+1℃程度で安定しています。ただし、地下水流れや温泉等自然条件によりこれと異なる場合もあります。

・地中は外気に比べ冬暖かく、夏冷たいため、熱を何らかの方法で取り出し、ヒートポンプの熱源として利用することで、大気を熱源にする場合に比べ、効率の向上が図れます。

・地中熱利用の方法には、大きく分けて地中に熱交換器を設置して熱媒により熱回収をするクローズドループや、地下水を直接汲み上げて熱利用するオープンループの2方式があります。

・下記に示す帯水層蓄熱もオープンループに該当します。


出典)地中熱利用促進協会Webページより


帯水層蓄熱とは

・帯水層蓄熱とは、平野部に発達した透水性の高い砂礫層(帯水層)とそこにある地下水を直接空調などの熱源として利用する技術です。

・2本の井戸を使い、夏の冷房で出た温排熱を蓄熱して冬の暖房で使い、冬の暖房で出た温排熱を蓄熱し、夏の冷房で循環利用する熱のリサイクルシステムが構築できます。
投入した熱量の7~8割が回収できますが、長期間放置しても、高温や低温になった地下水は、そのままの温度で維持されます。

・本方式は、地下空間を使った季節間をまたぐ一種のエネルギー貯蔵システムと考えることができます。